西湘歯科医院

2003年10月

「虫歯のメカニズム」
☆エナメル質が溶ける『脱灰作用』
私たちの口の中には様々な細菌が棲んでいます。
むし歯の原因菌『ストレプトコッカスミュータンス』 もそれらの一種です。 ミュータンス菌は、主として炭水化物や砂糖を原料としてネバネバした水には 溶けない物質を作り、その中で酸を産出します。
これが歯の表面につくプラークです。 酸によって、エナメル質からはカルシウムやリンがどんどん溶け出す 『脱灰』（だっかい）が起こりますが、これがむし歯の始まりです。
☆エナメル質を修復する『再石灰化作用』
食後しばらくすると食べ物が口に入ってきたことで 酸性に傾いたお口の中は、 唾液のもつ中和する働き（緩衝能）によって徐々にｐＨが元に戻ります。
さらに唾液の中に含まれているエナメル質と同じ成分であるカルシウムやリンが 、 歯の表面に戻ってきます（『再石灰化』）。
これで脱灰が修復されます。
お口の中では食事をする度に『脱灰』と『再石灰化』が行われます。 この二つの作用のバランスが崩れ脱灰の方向に傾けばむし歯が進行します。
むし歯を防ぐためには、規則的な食事習慣によってお口の中を酸性にする回数を できるだけ減らし、フッ素を活用して再石灰化を促進させます。
※次号をお楽しみに！！

2003年11月

「毎日磨いているのになぜ虫歯？なぜ歯周病？」
いまどき、ほとんどの人が毎日、毎日歯ブラシをしています。 中には1日3回以上も。治療の前に磨いてくる方もいます。 そんなに磨いている人がどうして歯医者に来るのでしょう？ もっともっと磨かないといけないのでしょうか？
答えは、・・・「そのとおり、 今の4倍磨いて下さい」ただし、それは時間や回数ではありません。面積です。
今までの経験から、ほとんどの人は歯の面積の4分の1にしか 歯ブラシが当たって いません。
それも磨きやすい外側の、 ブラシが動かしやすい真ん中あたりの歯に限ってです。 横みがきをすると歯から外れやすい前歯、磨いているうちにのどの奥を突いてゲッと なったり歯ぐきを突いて痛い一番奥の歯はそれ以下です。
我々歯医者は永久歯に番号をつけて呼んでいます。 真ん中の前歯が1番、奥に行くに従って2番、3番と呼びます。 ちなみに糸切り歯は3番、親知らずは8番です。
3,4,5番の歯がもっとも磨き易いのですが、磨き方によっては歯がすり減って しみる知覚過敏の原因になります。 歯磨きの時だけチクチクしませんか？
歯ブラシの毛先に歯磨き粉をたっぷり乗せて、1日1回、2往復で1年間磨くと すると730回こすったことになります。
12歳で大人の歯は生えそろうので、ご自分の年齢から12を引いて730を かけてみて下さい。 たとえば、45歳だと4090回、60歳だと35040回になります。 これだけの回数で例えば車を磨いたとすれば、きっと塗装がはげて下の鉄板が 出てくるでしょう。
「歯磨き」という呼び名がよくないですね。 それに替わる何か別のいい呼び方はないものでしょうか。 歯垢と呼ばれる歯の汚れは、鍋にこびり付いたコゲのように硬くて落としにくい ものではなく、 クリ-ムチ-ズの様な軟らかいものです。 従ってブラシの先が当たったらすぐに取れます（うがいだけでは取れません）。
それでも磨き残しがあるのはブラシの先が当たっていない事に他ならないのです。 小学校から今までで歯磨きのやり方をしっかりと教わった方はそれほど多く はないと思います。
ほとんどの方が親のやり方を真似たりテレビのCMを真似ているのではないでしょうか。 その親にしても同じ様に誰かの真似をしていたにすぎません。 磨き方にはいろんなやり方がありますが効率良くほとんどの歯面にブラシが当たる ものはそう多くはありません。
磨き残しがあるあなた、今あるという事はたぶん10年前にもあったでしょうし、 10年後にもきっとあるでしょう、磨きかたが変わらないとすれば。 そう、磨き残しの面は抜けるまで磨かないままなのです。
これこそが毎日磨いても虫歯、歯周病になる理由なのです。 舌で下の歯の裏側、上の歯のほっぺた側を触ってみてください。 ツルツルじゃないあなた、早速歯科医院でチェックして下さい。 そこで必ず赤く染め出してもらってください。
歯垢は歯と同じ色なので染め出さないとわかりません。 歯垢染色液が無い歯科医院は問題外です。 同じ様な赤い液体に「う蝕検知液」があります。 これは取り除かなくてはいけない軟化象牙質という虫歯のところを赤くする液体です。 歯垢同様、軟化象牙質も歯と似通った色をしているので、この液体を使わないと 判別が難しいことがよくあります。
これを使っていない歯医者は虫歯の取り残しがあるはずです。 残した虫歯の上に詰め物をしてもまたすぐ虫歯になります。 虫歯の治療の際、テ－ブルの上にこれがあるかどうかチェックしましょう。
※次号をお楽しみに！！

2003年12月

「1回？2回？それとも3回ですか？」

聞いたことありませんか、「食べたら磨こう、1日3回、食後3分以内に3分間」。 できますかこんなこと。 できているあなた、素晴らしいです。 この数字にはちゃんとした意味があります。
歯垢と呼ばれる歯の汚れが作られるには糖分が必要です。 食事には糖分が含まれています。それで毎食後、となります。 次に食後3分間は口の中が酸性になります。 この酸性の状態が歯を溶かす条件なのです。
この時期を過ぎれば段々中性になりますがこれは唾液の働きによるものです。 そして最後に3分間、ていねいに磨くにはこのくらいの時間が 必要だということでしょうが、 ゴロあわせの要素がなきにしも、といったところでしょう。
以前にも書きましたが、ほとんどの人に磨き残しがあります。 自己流の磨き方によって残ってしまうのですが、当の本人はすべての歯が磨けている と確信しています。
汚れを赤く染め出して見せないと、こちらの話もなかなか信用してくれません。 したがって磨き方も今までやっていた方法でいいと思っているので、 物心ついたころからのやりかたを変えていないかたがほとんどです。 ということは、今ある汚れは子供の頃からのもの、とも言えませんか？ 老化によって歯が抜けるのではなく、汚れがついている時間が長いから 歯が抜けるのです。
逆に考えれば、虫歯や歯周病になるにはそこそこ長い時間が 必要なのです。毎食後すぐに磨かなければ虫歯、歯周病になるのなら、ほとんどの人が中学生で総入れ歯でしょう。 もっと楽に考えましょう。1日のサイクルで口の中全体をきれいにしてください。
どうしても時間のない方は例えば、朝起きたとき、上の歯の表側だけみがきます、 昼食後は上の歯の裏側だけ、夕食後は下の歯の表側だけ、そして寝る前は下の歯の 裏側だけ、といったふうにです。 これで1日のうちに一通り磨けました。
これでも、歯の表側は毎日、裏側は何十年に1回というのよりもよっぽどいいと思う のですが。 ぜひ皆さんも、つるつるの歯がいかに気持ちのいいことかを体験して下さい。
※次号をお楽しみに！！